鯖と山芋と私

30 dai no mo jo

冬が終わる

春が来るのと冬が去るのは同時ではない。短くない期間並走していて、どこかでふっと前の季節がいなくなるのだ。

数日前までとはうってかわって極寒だった今朝、流しでお湯を出して洗顔し、タオルで拭いた顔をあげたら、シンクの中に真っ白な湯気が溜まっていた。

湯気はシンクの中をちょっとずつ下に沈んでいき、排水溝の上に円く、台風のようにかたまっていた。なんだかドライアイスみたいで面白い。小さな雲にふっ、と息を吹き掛けると、ワッと蒸気が散ってステンレスのシンクが姿を見せた。

昔のヨーロッパの地図とかで、風神が横から息を吹いて、雲が流れていくイラストを思い出した。台所の隅っこで、まるで小さな神様になったみたいな万能感を味わう。

午後には雪が降った。緑の草の上にはかろうじて積もったけれど、夕方には溶けて消えた。夜になると、昼間よりも暖かい。朝には確かに台所のシンク中にあった冬が、雪と一緒にどこかにいってしまったのだろう。