鯖と山芋と私

30 dai no mo jo

海へ行った日のこと

一度だけ、一人で海に行ったことがある。

 

当時一人暮らししていた町が海に近くて、引っ越しが終わって家族が帰った翌日に、ひとりになって急に海に近いことを思い出した。

グーグルで地図を見たら案外チャリで行けそうで、思い立ったらすぐに自転車を漕いでいた。

海までは30分くらいだった。ジャリの浜がゴロゴロしてて、寝転がると背中がいたくて、空は曇っていた。遠くに風車が見えて、なんだか私、なんだってできるぞ、みたいな気持ちになった。

だって女一匹、ひとりぼっちで自転車で海に行けたらさ、もうきっとその人はどこにだって行けるよ。

 

今でも時々、海がみたいなって思うことはある。だけど東京の近くの海は、あまりに孤独から遠すぎる。

 

懐かしいな、もう十年も前だ。

きれいじゃないし晴れてないし、ぱっとしないし、すきとおってもない海だったけど、

私その時、寂しくても生きていけるって、そう思った。

今あの海を見たら、私はなんて思うのかな。